『大人の「ちょうどいい」話し方』

人間関係、コミュニケーション

はじめに

この記事は、『大人の「ちょうどいい」話し方』(松尾紀子著、ダイヤモンド社)を読んで、重要だと感じた箇所を紹介し、その内容について筆者が感じたことや考えたことをまとめたものです。筆者が特に新鮮に感じたり、重要だと感じたりした部分に絞り、トピックごとにまとめました。

最後に、この本をどのような方におすすめしたいかも記載しました。購入を検討される際の参考になれば嬉しいです。

本書の内容について触れるため、一部ネタバレを含む可能性があることをご了承ください。

忙しい人向け:ざっくりわかる500字まとめ

本書は、元フジテレビアナウンサーの松尾紀子氏が「伝える力」を育てるためのヒントをまとめた実用書です。タイトルにある「ちょうどいい」とは、聞き手にも話し手にも無理のない、自然で誠実なコミュニケーションを指します。

会話における失敗は避けられないものであり、それを前提に自分なりの「ちょうどよさ」を見つけていくことの大切さが説かれています。また、「話し方の技術」だけでなく、「気持ちを伝える姿勢」や「心地よい雑談のコツ」、「人前での話し方」、「声の整え方」など、様々な場面に応じた具体的な方法が紹介されています。

本書は、話し方のスキルを身につけたい人だけでなく、日常のコミュニケーションに悩む人にも大きなヒントを与えてくれる内容となっています。

スキルよりも大切なこと

コミュニケーションのスキルはあればあるほどよいですが、それだけではよいコミュニケーションは生まれません。良いコミュニケーションの本質は伝えたいという気持ちと、その気持ちを相手に伝えることなのです。

例えば謝罪会見で、丁寧な謝罪の言葉が並べられていても誠意が感じられず不快な思いになった経験はありませんか?

反対に、幼稚園児の我が子から感謝の手紙を受け取った親の気持ちを想像してみてください。言葉は拙く、読み上げ方も上手とは言い難いかもしれません。それでもきっと、懸命に手紙を読む姿から気持ちは伝わるのではないでしょうか。

つまり、気持ちを乗せることがコミュニケーションの根本であり、そこにスキルを上乗せしていくのが正しい順番なのです。

人前で話すときのちょうどいい話し方

人前で話すときも、自分と相手の両方を尊重するという基本的なスタンスは同じです。その上で、著者は、大きく分けて、話す内容の構成、本番までの準備、本番中の話し方について言及しています。

その中でも特に、著者のアナウンサーとしての経験に裏打ちされた、本番までの準備の仕方と本番中の話し方について取り上げたいと思います。

原稿と練習

人前でプレゼンやスピーチをすることになったとき、原稿を準備してから本番に臨もうか、誰もが一度は悩んだことがあるのではないでしょうか。

この悩みに対して著者は、メモ程度で話せるのが理想だが、原稿を準備して繰り返し練習し、あたかも原稿などなかったかのように話せることが大切だとしています。

そして原稿を作成する際のポイントとして、以下の2点を挙げています。

  • 一文は50字以内に収める
  • 難しい言い回しは平易なものにする

書き言葉と違い、声は聞いたそばから消えてしまいます。ですから、一瞬で理解できる言葉でなければ聞き手は、理解できなかった言葉の意味に気を取られ、次に話す内容に意識を向けてくれなくなります。つまり、以上の2点は、聞き手の負担を軽減することで、話している内容をスッと理解してもらえるようにする工夫なのです。こうして作られた原稿は、書き言葉としてみると子供っぽく思えるかもしれませんが、それで良いのです。

また、原稿を推敲するときは、必ず声に出して読んでみることが大切です。読み上げることで、発音しにくい言葉といった、自分の苦手なポイントを発見することができます。そのような部分を、言いやすい言葉に置き換えていくのです。発音しにくい言葉がないとわかっているだけで、緊張する本番でも少しは安心することができます。

こうして原稿が準備できたら、あとは練習あるのみです。著者は特に、最も緊張する出だしを繰り返し練習することの重要性を強調しています。出だしがうまくいけばあとは流れに乗って話すだけです。しかし、スタートで失敗してしまうと、そこから立て直すことは難しくなります。ですから、とにかく出だしを完璧にすることが大切なのです。

本番中の心構え

本番中は、無理して明るくふるまう必要はありませんが、良い第一印象を持ってもらうことは大切です。そこで著者は、「少しだけ明るい自分」を演じる俳優になったつもりで話すという方法を提案しています。

また、始まった瞬間、聴衆の注目を集めるために大切なのは第一声だそうです。第一声は普段より大きめ、高めの声を出し、聞く人の意識を集めましょう。

そうはいっても、本番という極度の緊張状態で高く大きな声を意識して出すのは難しいです。そこで著者は、第一声の「第一音」だけを意識することを勧めています。第一音だけであればまだ頑張れる気がしませんか?それに、第一音が高ければ、続く言葉はそれに合わせて自然に高い音になります。これでつかみはバッチリです。

話している最中の視線についても著者は工夫しています。本書では「Nの字」と「Zの字」に視線を動かすことで、聞き手の一人ひとりが、「自分に向かって話しているんだ」と感じられるように工夫しているそうです。筆者も、人前で話すときはいつも、どこを見て話せばよいのかわからなくなっていたので、具体的な指針があるというのはとても心強く思えます。

最後に、本番中に失敗したと感じた時のリカバリー方法についても解説されています。本書では5つ挙げられていましたが、その中でも特にユニークで、納得できた以下の2つをご紹介します。

  • いったん区切って間を取る
  • 焦りが出たら足の裏を意識する

いったん区切って間を取るに関しては説明するまでもないと思います。ありがたいのは具体的にどのタイミングで間を取ればよいのかを示してくれている点です。焦ってペースが速くなっていると気づいたら、一文の終わりで一呼吸置くとよいそうです。これは著者がアナウンサー時代に実際に使っていた方法だそうです。

焦りが出たら足の裏を意識するというのは、なかなか聞いたことのない方法で面白いと感じたので取り上げました。いわゆる「上がった」状態になると、思考がぐるぐる頭の中で渦巻いてしまいます。そこで足の裏に意識を向けるのです。すると、一瞬で重心を下げることができ、少し冷静になった頭でリスタートすることができます。

声の磨き方

本書の最後の章では、人を惹きつける魅力的な声の作り方について述べられています。コミュニケーションが題材の本で良い声について述べているのは、アナウンサーとしての経歴をもつ著者ならではだと感じました。

著者曰く、生まれつき「悪い声」は存在しません。どんな声でも磨けば必ず魅力的な声になります。

魅力的な声を出すための基本となる姿勢として、「上虚下実」の姿勢が取り上げられています。これは武道の世界の言葉で、上半身には無駄な力が入っておらず自然で、下半身はどっしり構えて上半身をブレずに支える、そんな姿勢を表す言葉です。

声の響きに加えてもう一つ、声の大きさも重要な要素です。声量は肺活量に比例しますが、肺そのものに筋肉はないので、肺を覆う筋肉が動く範囲を広げる、つまりストレッチで体をほぐすことが重要になります。詳しい方法は割愛しますが、本書には肩甲骨や胸周り、脇腹に効果のあるストレッチがいくつか紹介されていました。

ストレッチの効果は一朝一夕で現れるものではありません。気が付いたときに短時間でもこまめに行うようにしましょう。著者は、1週間続ければ効果が現れ、3週間で響く声が獲得できると言います。

最も大切なのは、誰しも声を磨くことができるということ。そして、そのために必要なのは練習のみであるということです。本書を通して著者は繰り返し、練習することの重要性を説いています。声も話し方も、練習すれば変えられるのです。鍵となるのは、変えられるという意識です。

おわりに

ここまでお読みいただきありがとうございました。

本書は、著者自身の経験をもとに、多くの人が抱えているコミュニケーションの悩みを解決してくれる本です。

特に以下のような方におすすめです:

  • 人間関係に疲れている
  • なぜか人付き合いがうまくいかない
  • 人前で話すことが苦手
  • 自分の声、話し方に自信がない

コミュニケーションに苦手意識がある人にこそ、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

この記事が、読者の皆様の日々の悩みを解決するための一助になれば、筆者としても大変嬉しく思います。

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