『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』

はじめに

この記事は、『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』(山本衣奈子著、明日香出版社)を読んで、重要だと感じた箇所を紹介し、その内容について筆者が感じたことや考えたことをまとめたものです。筆者が特に感銘を受けた、あるいは考えさせられた部分に絞り、トピックごとにまとめました。

最後に本書をおすすめしたい人についても記載していますので、購入を検討されている方は参考にしていただけると筆者冥利に尽きます。

本書の内容について触れるため、一部ネタバレを含む可能性があることをご了承ください。

語尾濁しの影響

普段のコミュニケーションにおいて、語尾を濁すような言い方をよくするという方は多いのではないでしょうか。語尾を濁すというのは、「~ですが…」、「~けど…」といった、消え入るように終わる言い方のことです。文字にしたときに「。」で終わっていない文、と言い換えることもできるでしょうか。

かく言う筆者もこのような言い回しは好んで使っていたので、語尾を濁すのは気がきかない人の習慣だと書かれておりショックを受けました。

筆者が語尾を濁す表現をしがちだった理由は、そうすることで結論を曖昧にでき、発言に深みを持たせることができる気がしていたからでした。あえて明言しないことで相手に行間を読むことを求め、それで自分が賢いとアピールをしていたとも言えるかもしれません。似たような理由で語尾を濁す言い方をよくしているという方も多いのではないでしょうか。

しかし本書は語尾を濁すことに否定的です。語尾を濁らせると単純に相手が理解しづらい上に、発言に含みがあるように聞こえるので誤解のもとになるから、だそうです。ですから、著者は明快に言い切ることを推奨しています。

こうして比べてみるとわかる通り、筆者が考えているのはあくまで自分の体裁、それに対して著者が考えているのはコミュニケーションの相手への伝わりやすさです。このあたりの根本的な考え方の違いが、語尾の使い方という点で現れたのかもしれません。

相手を慮ることはコミュニケーションの鉄則であるという考えには筆者も同意しています。しかし、いざ現実の自分のコミュニケーションについて振り返ってみると、それを実践するのがいかに難しいかよくわかりました。

First impression vs Last impression

first impression とはみなさんご存じ、第一印象のことです。言葉によるコミュニケーションに限定すれば、第一声のことでもあります。

last impression は、first impression との対応から勝手に筆者が付けた名前です。(少なくとも手元の辞書には載っていませんでした。筆者はこういった対句的な表現が大好きなので考えてみました。)

これは読んで字のごとく、コミュニケーションが終わって相手と別れるときに残る印象、あるいは最後にかけた言葉を意味します。

さて、そんなfirst impression とlast impression ですが、一般にはfirst impression ばかりが重視され、last impression がやり玉に挙げられることはほとんどないと思います。

しかし著者は、気がきく人が重視しているのは実はlast impression の方であると言います。「新近効果」といった心理学的な理由付けもされていますが、それよりも具体例が非常にわかりやすく、納得できるものだったので、ここでも紹介しておきます。

「今日はありがとう。とても楽しかったけど、ちょっと疲れたねぇ。じゃあまた」

中略

「今日はありがとう。ちょっと疲れはしたけれど、とても楽しかった。またぜひ!」

本書32,33ページより

この例で、両者とも伝えている情報はほぼ同じです。しかし、前者の方がネガティブな印象を、後者の方がポジティブな印象を受けませんか?これこそがlast impression の効果です。

最初だけでなく最後にもこだわる。

この考え方自体が新鮮で、そういった視点を得られたことに非常に意義があると思っています。

何よりこの考え方は、実践への応用がとても簡単です。言葉を並べる順番に気を付けるだけでよいのですから、今日から、今すぐにでも始められます。

沈黙との向き合い方

沈黙、すなわち間が会話の中で生まれると、それを埋めなければと思って焦る、そんな経験をしたことがあるという方も多いのではないでしょうか。

筆者もそのような人間の一人です。焦りが伝わるとよいコミュニケーションはできないとの考えから、間を埋めようと焦るのは悪手だと考えていたのですが、間を埋めようとすること自体は正しいことなのだと考えていました。

本書では、必ずしも間は埋める必要がないものであり、むしろ健全な会話の中では自然と生じるものであるという考えが述べられています。間はうまくコミュニケーションできていないことの現れとは限らず、相手が思考したり整理したりしている時間である、とのことです。

また、話がつまらないものになる原因の一つも、この”間”の取り方にあるとされていました。間を許容できないと、間がなく詰まった話になり、それが単調かつ一方的な印象を与えるからという理由です。

確かに思い返してみると、「この人話しやすいな」と感じた人の多くは、こちらが口を開くのを待ってくれたり、会話のペースを調整してくれる人でした。今度は自分が、話しやすい人、気がきく人になる番であるというただそれだけのことです。

ただそれに気づいていないだけで、答えは意外と近くに転がっているものなんだなあと感じました。

そういった、ありふれているけどなかなか気がつけないことに気づかせてくれる本が良書なのかもしれません。

たかが一文字、されど一文字

本書によると、日本の文化は世界一ハイコンテクスト、つまり空気や行間を読むことを重視する文化だそうです。これは日本文化の中で生活している人は、多かれ少なかれ実感していることだと思います。

それを踏まえて、日本語でのコミュニケーションにおいて大切なことは何か。

その答えの一つとして、本書では言葉のニュアンスが挙げられています。

このニュアンスというものは大変繊細で、助詞の一つで伝わり方が180度変わってしまうこともあります。

しかし裏を返せば、ニュアンスを意識的に操れるように訓練すればコミュニケーションの質をぐっと上げられるということでもありますから、日ごろから言葉のニュアンスを意識する価値は十分にあると思います。

本書では「A”が”いい」と「A”で”いい」の2つの表現を比較しています。

前者はAへのこだわりが感じられ、「Aだからこそいい」というような前向きな印象を受けます。

それに対し後者は、ある種の諦めが現れているような、後ろ向きな印象を受けます。

ですから、助詞の一つといって侮っていると痛い目に遭う、そう感じる一節でした。

まさに「神は細部に宿る」ですね。

まとめ

この本をおすすめしたいのはこんな人

  • 感じのいい人になりたい
  • 気がきかないと言われたことがあるorそういう自覚がある
  • 周囲の人とより良い関係を築いていきたいと思っている
  • コミュニケーションに苦手意識がある

以上の条件に当てはまる方には、本書をぜひ手に取っていただきたいと思います。

本書が、よりよい対人関係を築く助けになってくれるかもしれません。

おわりに

この記事では、『「気がきく人」と「気がきかない人」の習慣』を読んで筆者が考えたこと、学んだことを、4つに絞って紹介しました。

50のトピックのうち紹介できたのは4つだけですので、少しでも興味のある方はぜひご自身で本書を手に取ってみてください。

筆者としても、まだまだ書き足りない思いですので、気が向けば本書についてまた記事を書くかもしれません。その時は、また目を通していただけると嬉しいです。

ここまでお付き合いいただきありがとうございました。

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