はじめに
この記事は、『このプリン、いま食べるか?ガマンするか?』(柿内尚文著、飛鳥新社)を読んで、重要だと感じた箇所を紹介し、その内容について筆者が感じたことや考えたことをまとめたものです。筆者が特に感銘を受けた、あるいは考えさせられた部分に絞り、トピックごとにまとめました。
最後に本書をおすすめしたい人についても記載していますので、購入を検討されている方は参考にしていただけると筆者冥利に尽きます。
本書の内容について触れるため、一部ネタバレを含む可能性があることをご了承ください。
時間の種類という見方
すべての時間はこの4つに分けられます。
本書38ページより
- 「幸福の時間」
- 「投資の時間」
- 「役割の時間」
- 「浪費の時間」
著者によると、人生のすべての時間は上記の4つに分類できるとのことです。そして、幸福な人生とは、文字通り「幸福の時間」によって生まれるものだとしています。
この考え方は、時間をいかにして作るか、時間の利用の効率化に焦点をあてている他の時間術に関する書籍とは一線を画す部分だと感じました。
これまで様々な時間に関する書籍を読んできて、そのどれもがうまく機能しないと感じたのも、このような土台となる考え方ができていなかったからかもしれないと感じました。
言い換えると、いくら小手先のテクニックで使える時間が増えようとも、それを意識して「幸福の時間」や「投資の時間」に回せなければ、永遠に時間に余裕などできないのではないかということです。
残り時間の衝撃
人生は想像以上に短い。
誰しもこのような言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか。
この言葉は当然、インプレッションイヤー、すなわち体感時間に関して言及したものです。
しかしながら、実時間に関しても想像以上に短いということを実感させてくれる具体的な数値も本書の中では紹介されており、その衝撃は計り知れないものでした。ここでも紹介したいと思います。
親の残り寿命が20年、1年間にともに過ごす時間が66時間(6日間×11時間)と仮定すると、ともに過ごせるのは残り1320時間、つまり55日間。
親とともに過ごす時間は、おそらく多くの人にとって最上級の「幸福の時間」だと思います。そんな幸せな時間が、時間に対して無自覚に過ごしていれば、あとたった55日間しかない。その事実に震えました。しかし、今のうちに気づけてよかったのではないでしょうか。少なくとも筆者はそう感じました。
時間のストーリー化
プロローグ化
プロローグ化とは、辛い時間や無意味に思える時間を「幸福の時間」へ至る過程、つまり物語のプロローグとみなす、著者独自の考え方です。よく言われるご褒美的な思考とは、主体をどちらに置くかという点で対極の考え方とも言えます。
なぜご褒美というとらえ方ではいけないのか、筆者なりに考えてみました。以下では具体的に、「面倒な宿題を終わらせたらおやつを食べる」と決めた状況を考えます。
ご褒美という考え方をすると、嫌なこと(この場合は宿題をする)を耐えれば嬉しいこと(おやつが食べられる)がやってくるという見方になります。これでも嫌なことを乗り越えるのに役立ちそうですが、嫌なことと正面切って向き合うことになるので心が折れやすいという問題がありそうです。(「ご褒美」というとらえ方をしている限り、嬉しいことは副次的なもの、サブという意識が生じてしまいます。)
それに対し、プロローグ化では、「気持ちよくおやつを食べるために宿題を終わらせる」という見方になります。このとらえ方であれば必要以上に嫌なことを直視しなくてすみます。さらにプロローグ化は、嫌なことの、いわば「嫌なこと度合」が増せば増すほど真価を発揮するのではないかと考えました。想像してみてください。普通の宿題を終わらせた後のおやつと、読書感想文を苦労して終わらせた後のおやつ、どちらがおいしく感じるでしょうか。
以上のように、嫌な時間をプロローグとしてとらえることができれば人生における困難な場面も違った風に見えてくるのではないでしょうか。
エピローグ化
こちらも著者独自の概念で、プロローグ化のある意味で対概念です。
エピローグ化は、もう終わった出来事、時間を自分なりにまとめ、意味付けをする作業です。過去の事実は変えられないけれども、その事実に対する解釈、意味付けはいつでも変えられるという考えが根底にあるのではないかと感じ、深く納得したので記載します。
エピローグ化のコツとして本書では、「振り返った時間をできるだけポジティブ化する」、「エピローグ化は「熱いうちにやる」」などが紹介されており、筆者の私見ですが、日記で知らず知らずのうちにやっていることなのかもしれないと思いました。では得るものはなかったのかというとそうではなく、むしろ「エピローグ化」として作業が明確に言語化されたことで、意識的に行えるようになったと感じています。
まとめ
この本をおすすめしたいのはこんな人
- いつも忙しいと感じている
- 時間はあるはずなのにやりたいことができていないと感じている
- 人生の意味を見失っている
- 漫然とした日々を送っている
どれか一つでも当てはまると感じたら、本書を読んでみることを強くおすすめします。きっと、それまでの日々を一変させてしまうような大きな学びがあるはずです。
おわりに
この記事では、『このプリン、いま食べるか?ガマンするか?』を読んで筆者が考えたこと、学んだことを、3つに絞って紹介しました。
紹介した内容はほんの一部で、他にもたくさんの革新的な考え方が詰まった一冊です。上記の条件に当てはまらない方にも、ぜひ人生で一度は読んでいただきたいと思います。
最後に、本書でも引用されている『モモ』の一節を引用して結びとしたいと思います。
人間はじぶんの時間をどうするかは、じぶんできめなくてはならないからだよ。だから時間をぬすまれないように守ることだって、じぶんでやらなくてはいけない
ミヒャエル・エンデ『モモ』
ここまでお付き合いいただきありがとうございました。
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