『私はネガティブなまま幸せになることにした。』

人生哲学

はじめに

この記事は、大竹稽著『私はネガティブなまま幸せになることにした』(三笠書房)を読んで、筆者が印象的だと感じたポイントを紹介し、考えをまとめたものです。

現代社会ではポジティブシンキングがもてはやされる一方で、「ネガティブであること」が否定されがちです。しかし、本書はネガティブな感情と共に幸せを見出す道を示しており、ネガティブな自分を受け入れることが幸福への一歩であるとしています。

本書の内容について触れるため、一部ネタバレを含む可能性があることをご了承ください。

ポジティブでいることは自然ではない?

「人間は本来ネガティブがデフォルトである」という考え方から、本書は始まります。ポジティブでいようとすること自体が、人間にとって不自然であり、無理をすることで苦しみが生まれるというのです。イギリスの哲学者バートランド・ラッセルの「諦めにも、幸福になるための役割がある」という言葉が引用され、不安や迷いと上手に共存することこそ、人間が持つべき視点であると説かれています。

ネガティブな感情を無理に追い払おうとするのではなく、むしろそのまま受け入れることで、心が軽くなり、幸せを感じやすくなるという視点は、現代のポジティブ思考重視の風潮とは対照的で新鮮に感じられました。

「わからない」を受け入れる力

本書では、「わからない」を受け入れることの大切さも強調されています。

社会では、すぐに「わかる」ことが求められますが、著者は「わからない状態に素直になる」ことの重要性を説いています。わからないことが自然であり、わからないままだと不安を感じるのもまた自然です。しかし、無理に理解したふりをしていると、いずれその偽りの「わかる」に耐えきれなくなってしまいます。

著者は、「わからない」と向き合い続けることで、やがて自分の中から「わかる」が湧き出てくる瞬間がある、だからわからないことに素直になり、「わからなければ恥」という圧力に屈してはいけないと言います。

この「わからない」に耐える力が、人間の成長や本当の理解につながるとのこと。私たちが日々抱く不安や迷いも、決してマイナスではなく、むしろ人間らしい自然な感情だと再認識させられました。

人生の意味を求めなくていい

「人生は無意味であっても良い」という、衝撃的な視点も本書で語られています。多くの人が「人生の意味」を追い求めますが、著者は「なぜ意味がなければならないのか」と問いかけます。人生に意味を見出そうとすることで、かえって自分を追い詰めてしまうこともありますが、無意味なままで構わないと受け入れることで、むしろ自由になれるとしています。

さらに、「成功が全てではない」というメッセージも力強く伝えられています。成功だけを追い求めることは、かえって本当の豊かさや幸せから遠ざかる原因になりかねない、と本書は警鐘を鳴らしています。成功を目的とするのではなく、何気ない瞬間にこそ豊かさや幸福が存在するという視点は、日々の生活をより豊かにするヒントになるでしょう。

幸せにもっともっとは危険

幸せにもっと執着すると、それはかえって不幸の原因になることがあると本書では述べられています。例として紹介されている寓話に、牛のように大きくなりたいと望んでどんどん膨らみ、最後には破裂してしまうカエルが登場します。「もっともっと」と求め続けることは、欲望に囚われることを意味し、それがかえって幸福感を損なうことになると警告しています。

また、ウルグアイ元大統領ホセ・ムヒカの言葉「貧しい人とは、限りない欲を持ち、いくら物で満たされても満足しない人」を引用しながら、何かを増やすことだけが幸せではないことを伝えています。日常に存在するささやかな幸福を感じ取ることこそが真の豊かさである、というメッセージに感じるものがありました。

まとめ

『私はネガティブなまま幸せになることにした』は、ネガティブであることを受け入れ、そこに幸せを見出すためのヒントが詰まった一冊です。現代社会で無理にポジティブになろうとする風潮に疑問を抱く方、日常の不安や迷いに悩む方にとって、この本は一つの道しるべとなるでしょう。

特に以下のような方におすすめです:

  • 自分のネガティブな感情に悩んでいる
  • 「もっと幸せに」と焦りを感じる
  • 迷いや不安を抱えながらも幸せを探したい

ネガティブな感情と共に、無理をせずに幸せを感じたいと考える方に、ぜひ手に取っていただきたい一冊です。

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