はじめに
この記事は、『あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』(佐藤舞(サトマイ)著、KADOKAWA)を読んで、筆者が印象に残ったポイントを紹介し、考えをまとめたものです。筆者の解釈が多分に含まれる内容となっている点をご理解ください。
最後に、本書をおすすめしたい人についても触れていますので、購入の参考にしていただければ幸いです。
また、本書の内容について触れるため、一部ネタバレを含む可能性があることをご了承ください。
忙しい人向け 300字要約
なぜ私たちは時間が足りないと感じ、満足できない日々を過ごしてしまうのでしょうか。本書はその原因を「人生の闇」――死、孤独、責任――から目を背けることにあると指摘しています。幸福とは苦痛を避けることではなく、この闇に主体的に向き合う先にあるのです。
そのためには、変えられるものと変えられないものを区別し、価値観を知ることが不可欠です。そして、自身の価値観を指針に目標を設定し、行動することで、充実した人生を築くことができるのです。自己理解を深め、自然体で生きる自己一致を目指すことが、満足度の高い人生の鍵となります。
さらに、強い結びつきと弱い結びつきが人間関係に果たす役割、価値観の探求方法、そして行動を通じて目標を修正する大切さなど、多くの示唆が込められています。本書は、自分の人生を見つめ直し、真に満たされた日々を送るための指南書といえるでしょう。
幸福な人生の鍵概念、「自己一致」
心理学において「自己一致」とは、「自分のあるべき姿」と「あるがままの自分」が一致している状態を指します。
自己一致している人は、無理に自分を飾ることなく、自然体で生きるため、その姿は周囲にとっても魅力的に映ります。
しかし、この境地に至るには、自分自身を深く理解することが不可欠です。容易なことではありませんが、自分の価値観や感情に正直に向き合い、受け入れることができれば心に安心感が生まれます。その安心感こそが、満足度の高い人生を築く土台となるのです。自分を偽ることなく生きることで、内面の葛藤が減り、日々の選択にも確信が持てるようになります。
自己一致は一朝一夕に達成できるものではありませんが、自己理解を深めることで、私たちはより自然で充実した生き方に近づけるのではないでしょうか。
変えられるものと変えられないもの
人生の苦しみと向き合うためには、まず「変えられるもの」と「変えられないもの」を見極めることが重要です。
本書ではこの考え方を、親鸞の『歎異抄』における「根本」と「枝葉」という概念を用いて説明しています。「枝葉」とは煩悩を指し、人間が完全に取り除くことはできないものです。一方、「根本」とは死や孤独、責任といった人生の避けられない闇を指し、これにどう向き合うかが人生の質を左右すると説かれています。重要なのは、枝葉の苦しみは治すことができない病だが、根本の苦しみは治すことができる病であるとされている点です。つまり、煩悩を抱えたまま人生の闇を受け入れることができるということです。
また、アメリカの神学者ラインホルド・ニーバーが遺した「ニーバーの祈り」でも、「変えられるものを変える勇気、変えられないものを受け入れる冷静さ、そしてその違いを見極める知恵」を求める言葉が残されており、親鸞の教えとも共鳴しています。
さらに、筆者はこの教えにアドラー心理学の「課題の分離」との共通点を見出しました。アドラー心理学では、自分がコントロールできることに集中し、他者や環境に関しては介入せず受け入れる態度を重視します。
これらの教えは、どれもコントロールできないものに囚われるのではなく、自らができることに意識を向けることで、人生の苦しみを乗り越える道を示しているのです。
人生への主体的な参加
本書では、人生への向き合い方の原則の一つとして、人生へ主体的に参加することを挙げています。
人生に積極的に参加するためには、自分が本当に求めているものを明確に知ることが不可欠です。私たちは時に、流されるままに日々を過ごしてしまいがちですが、サルトルの言葉「実存は本質に先立つ」が示すように、人は生まれながらにして意味を持つのではなく、人生の目的や意味を自ら見出す必要があります。何もしなければ時間だけが過ぎていき、気づけば自分が何のために生きているのか分からなくなってしまうかもしれません。
そのために大切なのが、自分の価値観を明確にすることです。価値観とは、自分が大切にしたいものや、何に喜びを感じるかを知ることであり、それを知ることで初めて、自分の人生に主体的に関わることができるのです。自分にとって何が意味あることなのかを見極め、その価値観に沿った行動を積み重ねていくことで、人生はより充実したものとなります。
目的のないまま流されるのではなく、自らの手で人生の舵を取ること。それこそが、満足感と充実感を得るための第一歩なのです。
まとめ
本書は、いつも時間がないという悩みの原因を普通とは異なる視点から考察し、その解決策を提示してくれる一冊です。
この本をおすすめしたいのはこんな人
- 気が付いたら時間が過ぎてしまっていると感じている
- よくある時短術、タスク管理術には飽き飽きしている
- なんとなく日々が味気ない
- このままで良いのかという漠然とした不安を抱えている
これらに当てはまるという方には本書を読むことを強くおすすめします。
おわりに
ここまでお読みいただきありがとうございました。
本記事では、『あっという間に人は死ぬから 「時間を食べつくすモンスター」の正体と倒し方』(佐藤舞(サトマイ)著、KADOKAWA)を読んで、筆者が興味深いと思ったところを紹介しました。
この記事が、読者の皆様の日々の悩みを解決するための一助になれば、筆者としても大変嬉しく思います。
今後もさらに役立つ情報を提供できるよう、精進していきますので、ぜひまたお立ち寄りください。
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